切妻屋根のファサードがシンボル 生まれ変わったもう1つの公会堂
大阪のもう1つの公会堂?
旧桜宮公会堂は、中之島公園の北東に位置する造幣局本局北側の桜之宮公園にあります。桜之宮公園とそこへつながる大川(旧淀川)沿いの遊歩道は、春には桜並木が美しい、都会のオアシスともいえる緑ゆたかな場所。その遊歩道から公園に入ると、緑の木々の間にあらわれる石造りの建物が旧桜宮公会堂です。まず、高い6本の石柱と直線的な切妻屋根のファサード(正面玄関)が目に入りますが、その姿はまるでギリシャかローマ時代の神殿を思わせます。
明治期の建物から復元されたシンボル
そのシンボルとなっているファサード部分は、1870年(明治3年)に建設された造幣寮(現・造幣局)の金銀鋳造所から移築されたものです。この当時、同鋳造所は築60年以上が経過し老朽化のため取り壊されることになったのですが、美しいと評判の高かった正面玄関部分は保存され、明治天皇記念館の建設時に取り付けられたのです。
また、記念館の建物全体も同鋳造所の現存時の姿に合わせて復元されました。このファサード部分は大阪府最古の洋風建築の1つであり、国の重要文化財にも指定されています。
旧桜宮公会堂の建築様式は?
切妻屋根とは下記画像のような、屋根の両側が傾斜になっている、山形の形状をした屋根のことをいいます。
これに加え、コーニス、ペディメントと呼ばれる部分も大きな特徴となっています。コーニスは、柱と屋根のひさしの境の水平の細長い部材で、軒蛇腹(のきじゃばら)ともいわれます。そして、ペディメントとは、切妻屋根とコーニスに囲まれた三角形の壁面です。ペディメントには彫刻などで装飾を施すことが多く、美観上とても重要な部分とされています。
まさに、ローマ神話に出てくるような、直線的な力強さと神秘的な優美さが感じられる建物です。
生まれ変わった近代化の象徴
戦後以降、この建物は「桜宮公会堂」となり、図書館やギャラリーとして使われてきましたが、2007年に閉鎖されてしまいます。しかし、それから6年後の2013年、リノベーションを経て「桜宮公会堂」は結婚式場に生まれ変わりました。平成のリノベーションでは、歴史ある建物の構造全体を残し、内装も本来のスタイルを活かした改装が行われました。
いったんは閉鎖され歴史に埋れかけた名建築が、人々の門出を祝う場所としてよみがえったのです。
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