沿岸地域で採用される屋根の特長とは?
みなさんは、一軒家の屋根を意識して観察したことはありますか? 屋根の形や材料は、場所ごとの環境によって需要が異なります。つまり、屋根には地域によって特色があるということ。そこで今回は、沿岸地域で採用されている屋根の特長をご紹介していきます。水辺に近い場所に建つ家の屋根には、一体どのような特長があるのでしょうか。
沿岸地域の大きな悩みは「塩害」
今回は、海岸近くの陸地の家を対象としてご紹介します。
さて、沿岸地域にお住まいの方々にとって、避けられない大きな悩みは潮風の影響です。潮風に含まれる塩分が建物や車両に付着し、腐食や劣化を引き起こす現象。これを「塩害」と言います。海に面した場所には常に潮風が吹き込むため、塩分が外壁や屋根に多く付着しやすく、その結果、建物の寿命が短くなるという問題が発生します。塩害は金属部分に大きな影響を及ぼし、錆びを引き起こす原因に。金属部分が錆びると屋根の強度は低下し、屋根材の劣化、ひどければ落下の原因となることもあります。
沿岸地域での塩害の影響は、特に海岸線から2km以内のエリアが最も顕著。海岸線から200m~500m以内を「重塩害地域」、2km以内を「塩害地域」と呼び、このエリア内では塩分の影響を受けやすいため、建物の維持・管理において注意が必要です。また、地形や風の強さによっては、さらに広範囲にわたって塩害の影響が及ぶこともあり、5km以上離れた場所で被害が出た実例も。風向きと風の強さによって、思いもよらぬところにまで被害をもたらすのが塩害の怖さです。
沿岸地域に適した屋根の素材は?
コストは少し嵩みますが、昔から多く使われていて、塩害に強い屋根の代表と言っても過言ではないのが瓦屋根。近年ではより高温で焼き上げているため、さらに塩害リスクが低くなっています。
また、一般的な屋根材として広く採用されている「ガルバリウム鋼板」は、金属素材の一種でありながら耐食性に優れたアルミニウムや亜鉛で鉄板をコーティングしているため、錆びに強い性質を持っています。軽量でデザイン性も高く、コストパフォーマンスの良い屋根材。塗装と組み合わせることでより塩害による被害を抑えられる素材です。
さらにガルバリウム鋼板をベースに進化した屋根材が、「SGL(エスジーエル)鋼板」です。SGL鋼板は、マグネシウム(Mg)で防錆効果を加えるなどの改良がなされ、実にガルバリウム鋼板の3倍ほどの耐食性を誇ります。
これらの鋼板の比較対象として挙げられることの多い「ステンレス」も、必ずしも塩分への耐久性が十分とは言えない素材です。もし沿岸地域で採用するなら塩分への耐久性を考慮した商品を選ぶ必要があります。
耐食性のみで選ぶのであれば、コスト面でかなりのハードルはありますが現存する屋根材の中でも屈指の耐食性を誇るのが「チタン」です。1970年ころから、腐食しない素材として塩害に悩みを抱える地域の神社仏閣などで使用され、それをきっかけに建材としての運用が始まりました。近年では一般住宅にも普及し始めている素材です。
これから沿岸地域で家を建てる方や、リフォームを検討されている方にとって、快適な住環境を作り上げるために優先すべきは塩害に強いという部分です。屋根材ごとの特長を知った上で、工事やメンテナンス費用・機能性・デザイン性など、自身のニーズに合った屋根材を選んでみてはいかがでしょうか。
日本と海外では屋根事情も違う?
最後に余談となりますが、海外の沿岸地域についても簡単にご紹介します。沿岸地域の家、というのは何も日本だけに存在するわけではありません。しかし、日本と海外では屋根の事情は少し異なります。
たとえば、地中海の沿岸部の屋根を想像するとオレンジ色の瓦屋根を思い浮かべませんか? 瓦屋根は塩害に強く、日本でも使われてきましたが、SGL鋼板など新たな屋根材が注目されている今は主流とは言えなくなってきました。それに比べて、地震や台風などのリスクが日本よりも低い地中海地域では、スペイン瓦やフランス瓦をはじめ、いまだに瓦屋根が根強く使用されています。そのほかにも、アルミニウム屋根も軽量で塩害に強い屋根材として海外の沿岸地域で人気なのだそう。
世界という範囲で見ると、沿岸地域の家の屋根にも違いがあります。海外の沿岸地域を訪れる機会があれば、屋根に注目してみるのも面白いかもしれません。
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