グランピングに欠かせない「ドームテント」のルーツ
近年、アウトドアの定番として急速に普及しているグランピング。テントや食材の準備をする手間がなく、快適でちょっぴり豪華なキャンプ体験ができるエンターテインメントです。実際に行ったことがなくても、ネットやテレビのニュースなどで知ったという方もいるのではないでしょうか。その際、骨ばった丸型の「ドームテント」をよく見かけると思います。今回は、グランピングをより楽しむための豆知識として、ドームテントのルーツや特長、構造についてご紹介していきます。
モンゴルの遊牧民が使用する「ゲル」がルーツ
グランピング施設としてよく見かけるドームテントのルーツは、モンゴルの伝統的な住居である「ゲル」だと言われています。ゲルとは、遊牧民が使用してきた移動可能な組立式の住居。寒冷地や風の強い地域でも耐えられるように設計されています。この性能は、グランピングで活用されるドームテントの設計にも反映されています。
ゲルは慣れた大人3〜4人が作業して、設営なら2〜3時間、解体だと1時間ほどで完了するのだそう。組み立てが短時間でできることから、頻繁に移動する遊牧民にはとても実用的な住居です。構造は、円形の形状と中央に配置された2本の柱が大きな特徴。丸い形は風を受け流す、または積雪から建物を守ることに優れた性能を持っています。
ドームテントは、ゲルが持つ「性能」と「形状」を継承しつつ、現代の技術を駆使してさらに快適さと利便性を追求した建物です。例えば、断熱性を確保するため二重構造になっていたり、セキュリティー面での安心感を得るためドアを取り付けたり、トイレやシャワーを取り付けて高級感を出したりなど、グランピング施設ごとに多種多様なバリエーションが存在。
モンゴルのゲルからインスピレーションを得て進化したドームテントは、現代のグランピングを通じて、多くの人に自然の中での快適空間を提供しています。
華やかなグランピングを実現するドームテントの特長
グランピングで使われるドームテントには、デザインや機能性などが異なる複数のタイプがあります。ここからは、現在多くの施設で採用されている「F・domes(エフドーム)」を例に、ドームテントの特長をご紹介します。
まずはデザイン。ドームテントは一部が透明な素材を使用していることが多く、テントの中にいながら外の景色を楽しむことができます。グランピング施設は自然豊かな場所にあることがほとんど。一部が透明なデザインであるドームテントとの親和性は高く、快適な室内空間でアウトドアを体験することができます。特に夜間には、星空を眺めながらリラックスすることができるため、多くの利用者にとって魅力を感じる(ドームテントの)特長だと言えるでしょう。
また、ドームテントは風や雪などの厳しい気象条件でも撤収する必要がないほど頑丈なので、年間を通じてさまざまな環境で使用することができる点も特長です。天候に左右されないのは、旅行者にとって嬉しいですよね。
そして、キャンプをしているとは思えないほど内部に広い空間がある点も見逃せない特長です。グランピング施設にあるドームテントのほとんどは、複数人での宿泊や大きな荷物の収納にも対応可能。また、一般的な宿泊施設の天井と同じくらい天井が高いドームテントも多いため圧迫感もなく、のびのび過ごすことができます。
透明で景色が楽しめるデザイン、優れた耐久性と安定性、広い内部空間といった特長は、グランピング(グラマラス+キャンピング)の名にある通り、華やかで快適な時間を体験する上でとても重要な役割を果たしています。
ドームテントの構造は世界一の頑丈さ!?
グランピングのドームテントでよく見られるF・domesのフレームには、「ジオデシック構造」が採用されています。これはアメリカの発明家・建築家であるバックミンスター・フラー氏が考案した構造体で、三角形を組み合わせて球状の形をしている構造のこと。ではなぜ、ドームテントにジオデシック構造が採用されるのでしょうか。
その理由は、ジオデシック構造における最大の特長が、高い安定性と耐久性だからです。そもそも球体は、世の中で一番衝撃に強いとされる構造体。三角形をたくさん並べて、限りなく球状に近づけたジオデシック構造は、世界一頑丈な構造物と言われるほどの強度を誇ります。つまり、これを採用しているドームテント(ジオデシック・ドーム)も非常に頑丈な建築物だということです。
また、ジオデシック・ドームは空間を効率的に利用できるように設計されています。形を組み合わせて球状空間を生み出すジオデシック・ドームは、サイズの自由度も高いため、天井の高さやスペースの確保が可能。これらはグランピングで快適なアウトドア体験を楽しむのに欠かせない要素で、ジオデシック構造が生み出すメリットのひとつです。
透明や宙吊りの珍しいタイプも存在
ドームテントのルーツやF・domesを例としてドームテントの特長、構造をご紹介してきましたが、最後に別タイプのドームテントについても触れていきたいと思います。
F・domesと形は似ていますが、フレームレスの透明型ドーム「AURA DOME(アウラドーム)」というものがあります。このドームテントの特長は、360°透明で自然との境目がなく、星空観賞にもってこいのテントという点。そのままだと外から中が丸見えですが、天井以外はカーテンを閉めることができるので、周囲の視線を遮ることも可能です。六角形のポリカーボネート板を組み合わせたハニカム構造を採用しています。
また、全国でも少数ですが木に吊るされた球体型テントというのもあります。部屋に入るための階段はありますが、夜にライトアップされたときの風景は宙に浮いているように見えて、まるでファンタジーの世界のよう。こちらはF・domesと同じジオデシック構造を採用しています。
今後グランピングの予定を立てる際は、泊まってみたいドームテントのタイプも含めて調べてみてはいかがでしょうか。
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