降雪量の多い地方の家におすすめ! 無落雪屋根の特徴とメリット
降雪量の多い地方 に暮らす人々を憂鬱にさせる冬の重労働といえば“雪下ろし”。不安定な屋根に上がって積もった雪をスコップで何度もかき下ろす作業は、時間と労力を費やすだけでなく、大きな事故にも繋がりかねません。そんな重労働から、私たちを解放してくれる屋根の一つに「無落雪屋根」があります。 雪下ろしをすることなく冬を過ごせる「無落雪屋根」とは、どのような特徴をもつ屋根なのでしょうか?
降雪量の多い地方におすすめ! 雪に強い屋根とは?
雪に強い屋根として注目されている「無落雪屋根」。積雪量が少ない地域に暮らしていると、なかなか目にすることはありませんが、北海道など 降雪量の多い地方では、かなりの割合で新築の家に採用されているようです。その特徴は、屋根の上に雪を載せたまま安全に過ごせる点にあります。
降り積もった雪をそのままにしておくと、許容量を超えた場合、重みで屋根や建物が破損する可能性があります。そこで、通常の三角屋根は勾配をつけて雪が滑りやすいようにしていますが、落雪により人や車などに被害を加えてしまうこともあります。そのため、定期的に雪下ろしをする必要があるのです。
一方、無落雪屋根は“雪が自然にとけるのを待つ”という新たなコンセプトのもとに誕生した屋根。辛い雪下ろしをすることなく春を迎えられる、降雪量の多い地方の救世主といえるでしょう。
降雪量の多い地方におすすめ 無落雪屋根の3つの方式の特徴
無落雪屋根は、その構造によって「勾配屋根方式」「ルーフフラット方式」「スノーダクト方式」の3タイプに分けることができます。
勾配屋根方式
勾配(傾斜)のある一般的な三角屋根に雪止めが設置されている、または、初めから雪止めがついている構造です。降り積もった雪は雪止めにひっかかり、滑り落ちることなくそのまま自然にとけていきます。
一方で、雪どけ水や雨水は勾配によってスムーズに流れ落ちるため、雨漏りなどのリスクは少ないようです。
ルーフフラット方式
「勾配屋根方式」と同じく雪を載せたまま処理する方式ですが、こちらは三角ではなく平ら(フラット)な屋根。平らなので雪が滑り落ちることはありませんが、実はわずかに勾配が付けられており、雪どけ水や雨水は傾斜方向に流れる構造です。
積もった雪のうち、大部分は風に飛ばされ、内部で凍ってしまった部分は徐々にとけて流れ落ちていきます。
スノーダクト方式
中央部分に設置されたダクトに向かって緩い勾配がついている構造の屋根です。太陽光などで自然にとけた雪が、ダクトから室内を通って外に排出されます。通常の三角屋根とは逆に、中央部がくぼんでいる形状から「バタフライ屋根」とも呼ばれることも。
建物の周囲に雪や雨水が落ちる心配がなく、つららもできにくいため、現在降雪量の多い地方で見られる無落雪屋根の中でも主流となりつつあるようです。
屋根を無落雪屋根する場合のメリットとデメリット
降雪量の多い地域では積極的に導入されている無落雪屋根。最大のメリットは、なんといっても“雪下ろしの必要がない”ということでしょう。従来の三角屋根の場合、落雪による被害などを防ぐため定期的に雪下ろしをしなければいけません。
しかし、高い屋根の上で行う雪下ろしは転落の危険を伴う大変な作業。消防庁の調査によると、2017年度(2016年11月~2017年3月)における除雪作業中の死亡者は102名にも及んでいます。
その点、無落雪屋根は雪が、自然にとけるまで載せたままにしておけるので安心・安全です。また、雪下ろしをする場合、建物の周囲に雪を溜めておくスペースを確保する必要がありますが、無落雪屋根ならばそれも不要。土地を有効に使うことができますね。
一方、デメリットとして考えられるのは“建物へのダメージ”です。屋根に積もった雪の重さを1立方メートル辺りで計算すると、新雪で約50㎏~150kg、自重で圧縮されたしまり雪では、約250kg~500kgにも達すると言われています。
無落雪屋根では雪を下ろさずどんどん積もらせることになるため、重さで屋根が陥没したり、ドアや窓が開かなくなったりする可能性があるのです。そんなリスクを回避するためにも、無落雪屋根の施行は信頼できる業者に依頼しましょう。
また、スノーダクト方式の場合には、ダクトの排水口にゴミや枯れ葉などの異物が詰まると、行き場を失くした雪どけ水が屋根に溢れ、雨漏りを起こすことがあります。年に1回はメンテナンスを行い、排水口やダクト周辺をチェックしておきましょう。
無落雪屋根にする場合のおすすめの屋根材
無落雪屋根に適している素材は、ズバリ「金属」です。金属は組み合わせることによってほぼ密閉された状態になるため、雪どけ水や雨水が入りこみにくくなります。金属屋根材は他素材と比較し軽量のため、構造(躯体)にかける負担も少なくなります。また、古くからある瓦屋根などに比べると非常に軽いことから、建物の重心が低くなるため、地震にも強いと言われているのです。
「そうはいっても、金属だから錆びてしまうのでは?」と不安になる方もいるかもしれませんが、最近の金属屋根材は防錆加工が施されているものがほとんど。
特に「ガルバリウム鋼板」は軽量で耐久性に優れている上、防錆性も高く、多くの無落雪屋根で採用されています。屋根材に迷ったら、「ガルバリウム鋼板」などの金属素材を選ぶことをおすすめします。
無落雪屋根はいまや降雪量の多い地方での安心・安全な生活に欠かせないもののひとつ。
降雪量の多い地方で一戸建てを建築予定の方、もしくは屋根のリフォームを予定している方は、ぜひガルバリウム鋼板を屋根材とする無落雪屋根の導入をご検討ください。
記事についてお気軽に
お問い合わせください。
閲覧履歴からあなたにおすすめの記事です。
-
1000年以上長持ちする屋根建材としての「チタン」
原子番号22 Ti(Titanium)、通称「チタン」。 みなさんは、チタンという素材にどのようなイメージをもっていますか? チタンは実用金属の元素のなかで、鉄、アルミニウム、マグネシウムに次いで4番目に多い鉱物資源です…
-
過酷な自然との闘い〜北海道の屋根の歴史と進化〜
地域によっては冬と夏の気温差が60度にも達し、冬は一日に1メートルも雪が積もる過酷な気象の北海道で、断熱性や気密性を確保するための建材の役割は極めて重要です。 明治時代に開拓使が入植して以降、道外とは異なった進化を遂げて…
-
屋根の用語、いくつ知っていますか? 〜Vol.2〜
前回の記事 屋根の用語、いくつ知っていますか? 〜Vol.1〜 歴史とともに増えていく屋根材に関する用語 瓦や金属など、屋根材を大まかに見分けるのはさほど難しいことではないでしょう。しかし、瓦や金属にはさま…