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屋根から考える災害対策

屋根

地球温暖化が原因ともいわれる大型台風や豪雨による災害が、近年、頻繁に発生しています。なかでも、2018年に近畿地方を襲った台風21号、2019年に関東・東北地方を襲った台風19号の強風がもたらした被害は、記憶に新しいところです。住宅の屋根材が吹き飛ばされる被害が続出しましたが、その一方で、同じ地域でも屋根の損害が少ない住宅もありました。建物の屋根材に何を選ぶかにより、台風だけでなく地震の被害の程度も変わるといわれます。今回は暴風や豪雨などの気象災害と地震に強い屋根をご紹介します。

雨漏りに強い屋根

昨今では台風シーズンを問わず豪雨が発生することも少なくはなく、住宅の“雨漏りリスク”が高まっています。屋根材が劣化すると、局地的な大雨が降った際に、雨水が屋根材の内部に浸透してしまう可能性があります。防水シートや野地板にまで浸水が進めば、床、壁、梁、柱などに影響を与えることにもなりかねません。天井のシミを見て屋根材の劣化や雨漏りに気づいたという話はよく聞きますが、実はその時点ですでに屋根材が劣化していたり、野地板の腐食が進んでしまっていたりする場合があるのです。
<スレート屋根>
スレート屋根の場合、重なり合った屋根材の隙間から雨水が浸透しやすいという弱点があります。また、スレートは素材自体の防水性が高くないため、表面の塗装の劣化が屋根材の劣化に直結しやすい特徴があります。隙間から浸透した雨水は屋根材と防水シートの間を通って排出されます。しかし、塗装がはがれていたり、防水シートの劣化を見逃していたりすると、台風などの激しい風雨のもとでは野地板から家屋に雨水が侵入してしまうリスクが高まります。
<瓦屋根>
瓦屋根で使用される瓦(日本瓦)は、釉薬を塗布した陶器瓦、釉薬をかけずに仕上げる無釉瓦ともに耐水性、防水性に優れ、耐久性もあります。そのため、スレート屋根と違って屋根材自体の劣化を心配する必要はほとんどありませんが、屋根の頂点部分である「棟(むね)」は、地震や台風で破損しやすいといわれています。雨漏り対策として万全を期すため、瓦のズレや破損がないかを定期的に点検することをおすすめします。
<金属屋根>
雨漏りのしにくい屋根として期待できるのは、ガルバリウム鋼板やエスジーエルに代表される金属屋根です。金属屋根は、塗装に加えて金属表面のめっき性能が飛躍的に進歩しているので、屋根材自体の劣化のリスクはほぼ解消されてきています。金属屋根にはさまざまな形状や施工方法がありますが、屋根材同士を緊密に接合して雨水の入る隙間をなくす工法や、逆にスムーズに雨水を排出する形状もあります。雨漏りに強く、防災対策の視点からも優れている、金属屋根は検討すべき屋根材の一つと言えそうです。

強風に強い屋根

台風の強風や竜巻の突風に強い屋根は、建物にしっかり固定されている屋根です。これはどんな材質の屋根でも変わりありません。安全な工法選択と確実な施工、適切なメンテナンスが最も大切です。

瓦屋根は頑丈で重さもあるので、安心なイメージがありますが、台風や竜巻のもたらす暴風の前では容易に飛散します。瓦を固定している針金や銅線、釘やビスが経年劣化などにより外れてしまうこともあります。

一見、軽くて吹き飛ばされてしまいそうなイメージのあるスレート屋根や金属屋根は、しっかりと固定することで耐風性の高い屋根になります。ただし、屋根材に破損があると、そこに風が吹き込んで破損が広がるリスクもあります。軒先などの屋根の端面は特に風の力がかかりやすいので、新築や修繕の際は気をつけたいところです。

輸入住宅などではアスファルトシングルと呼ばれる、接着剤で糊着させる屋根材が使われることもありますが、接着剤も年々劣化していきますので、他の屋根材と同様の注意が必要です。

どんな屋根材でも、それぞれの弱点を知った上での定期的な点検と補修が最大の安全対策となるので覚えておきましょう。近隣に住む方の安全のためにも、適切な頻度で定期的な点検やメンテナンスを業者に依頼しましょう。

屋根材の耐久性

ここまで屋根材の雨漏り対策、強風対策について解説してきましたが、屋根材そのものの経年劣化により機能性が失われ、大きな被害につながる可能性があるので、定期的にメンテナンスを行い事前に対策をしておきましょう。
瓦屋根(日本瓦)の耐用年数は約40-60年。良質の瓦であれば数百年も使用される場合もあります。ただし、瓦を留め付ける部材にはそこまでの耐久性はないので、定期的な点検とメンテナンスが必要です。
スレート屋根は定期的なメンテナンスをした場合、約20-25年の耐用年数とされています。屋根材自体の耐久性はそれほど高くないので、長持ちさせるためには10年を目安とした塗り替え工事が必要となります。
金属屋根の中で最も多く採用されているガルバリウム鋼板の耐用年数は約40年とされています。メンテナンス期間は塗装のグレードや鋼板の性能によって異なりますので、メーカーに確認してみてください。
災害対策の観点で屋根材選びをする際は、屋根材のメンテナンスの頻度や耐久性についても勘案しながら検討してみてはいかがでしょうか。

屋根は軽いほうが、耐震性が高まる


最後に地震に強い屋根材についても見ておきましょう。屋根は重いほうが安定するというイメージはありませんか? 実はまったく逆。屋根は軽いほうが地震の倒壊リスクを軽減できるのです。その理由は建物の重心の位置にあります。屋根が重いと、建物全体の重心は高くなります。重心が高くなるほど、地震で横揺れを受けた時の揺れ幅は大きくなります。つまり倒壊のリスクが高まるということです。

屋根にかかる重さは屋根材によって大きく異なります。古くから日本の建物に使われ、瓦屋根に使用される日本瓦は約50kg/㎡、洋風の建物で目にするセメント瓦は、それより少し軽く約40kg/㎡。一般住宅に多いスレート屋根になると約20kg/㎡とかなり軽量です。それよりさらに軽いのが、金属屋根。約5kg/㎡ほどですので、瓦屋根の約1/10の重さです。屋根にかかる総重量は、屋根材と屋根の面積によっては数トンに及ぶこともあり、建物への負荷と重心の位置に大きく影響します。

住宅を新築する際は、耐震性も考慮して屋根材を検討することをおすすめします。また、既存住宅でも屋根材を軽量のものに交換することで耐震性を高めることもできます。耐震基準が定められた昭和56年5月31日以前着工の建物の耐震リフォームには、自治体によって助成金を受けられる場合がありますので、リフォームを計画している方は、補助を受けられるかどうかの確認もしてみてください。

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