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屋根と暮らしのスタイルマガジンRoofstyle

雨といは住まいの耐久力を高める陰の立役者

メンテナンス

屋根や外壁は住まいの顔といえる部分で、視界に入りやすいこともあってメンテナンスへの意識も高いかと思います。しかし、屋根や外壁以外にも住まいを守る役割を果たしている大事な設備はあります。そのひとつが「雨とい(雨樋・雨どい)」。雨水から住まいを守ってくれる、とても重要な装置です。みなさんは、雨といの役割や種類についてどれくらいご存知ですか? 今回は、目立たないところで住まいを支えてくれている雨といについてご紹介します。
 

そもそも雨といって何?

 
上記の写真を見ると、軒先の下に受け皿のようなものが横に伸びているのが分かります。これは「軒とい」と呼ばれており、軒といから住宅の下に伸びる筒状のものが「縦とい」。そして、軒といと縦といをつなぐ部分にあるのが「集水器」と呼ばれ、これらの部材を総称したのが「雨とい」です。厳密にはもっと多くの部材で構成されていますが、雨といの役割を知る上で覚えておきたいのはこの3つ。
 
①屋根から流れる雨水を軒といで受ける
②勾配を利用して集水器に雨水を集める
③縦といを通って地上(排水管など)へ排水する
 
雨といはこのような役割を持った装置です。目的は雨水から建物を守ることなので、建物全体を囲うように張り巡らされています。では、雨といがなければ一体どういったリスクがあるのでしょうか。
 
雨が降ると、屋根の勾配に沿って雨水は下に流れます。躯体形状や軒の出にもよりますが、このとき雨といがなければ、まずダメージを受けるのは破風板(一般的には雨といが取り付けられている部位)、そして外壁となります。雨といがないと、屋根から流れる雨はそのままダイレクトに地上へ流れ落ち、外壁が雨水や地面から跳ね返った泥で汚れてしまいます。これを放置しておくと徐々に塗装が劣化し剥がれ、雨漏りの原因となる外壁のひび割れを誘発。さらに外壁がひび割れすると、壁から水が浸水して腐食の原因になったり、湿気を好む白アリの発生につながったり、コケやカビが発生したりと、建物の強度を低下させて寿命を縮めてしまいます。
ほかにも、雨水の落下は土台や建物の基礎すらも傷めかねません。雨が地面で跳ねることで騒音の原因にも。雨といは排水装置ですが、その結果として雨漏り防止や建物の土台や基礎を守ってくれているのです。一見地味な雨といは、住まいにとって重要な役割を担っているのですね。
 
 

過去には意外な役割も

 
大昔には別の役割もありました。雨といに関する最も古い文献は、平安時代後期の歴史物語「大鏡」。この文献の一説を読み解くと、当時は飲料水や生活用水として貴重だった雨水を、屋根から水槽に導く「上水道」としての役割もあったのだそうです。現存する最古の排水用雨といは、東大寺三月堂にあります。瓦が使われた屋根には雨水を処理する雨といが必要だったと考えられていたため、江戸時代までは神社仏閣を中心に普及していきました。江戸時代より前の一般住宅は、屋根自体が水分を吸収してゆっくりと流す草葺きや茅葺きがほとんどだったので、雨といが必要なかったといわれています。
しかし、江戸時代に入ると人口が集中する街では住宅が密集するようになり、隣家と軒を接することが増えました。すると、隣家の雨水が流れ込んできたり、雨だれが跳ね返ることで外壁が汚れたりと、たびたび雨によるトラブルが起こるようになります。また、茅葺きの屋根は火災に対して脆弱で、出火すると類焼をまぬがれることが難しく、町中が火の海になるという悲劇も起こりました。その影響から、民家(特に城下町では)の屋根にも神社仏閣と同じく瓦が使用されるようになり、一般住宅に雨といが普及するようになります。歴史によって雨といの役割が変化していったというのは意外でしたね。
 
 

目的や地域性によって種類と素材を使い分ける

 
雨といの種類(形状)は大きく分けて4つあります。みなさんが最もイメージするのは「半円型(丸型)」でしょう。築20年以上の一般住宅はほとんどがこの形状で、最もポピュラーな雨といです。 
ただ、近年は「角型」が主流になりつつあります。築年数が浅い住宅に使用されていることが多く、排水量が半円型より多いのが特徴。雨量が多い、またはゲリラ豪雨の心配がある地域で重宝されています(排水能力は、形状のほかに施工時の水勾配も大きく関係する)。
そして、片方は半円型、もう一方は角型という「リバーシブル型」も存在。建築物の見た目に合わせて形状を選べるだけでなく、半円型と角型の中間くらいの排水量を確保できるので、排水量を増やしつつデザインは丸型にしたいときなどに使われます。
最後は、雪が多い地方で使われる「特殊型」。積雪による破損や、雪かきのときに傷つかないよう覆いがついているもので、構造の複雑さから価格は高額になりがちです。

 
また、雨といに使用される素材は主に次の6種類が挙げられます。
 
●塩化ビニール(プラスチック)
安価で取り扱いも手軽。しかし耐久性には乏しく、日光や雨風にさらされると劣化や破損しやすいというデメリットがあります。鉄芯を塩化ビニールで覆い、強度を高めたものも
存在します。
 
●ガルバリウム鋼板(溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板)
耐久性があり、加工しやすく錆びにくいのが特徴。金属素材としての普及率も高く、金属材としてはリーズナブルですが、雨とい市場全体に対する使用率はまだそれほど多くありません(ガルバリウム鋼板が普及するまでは、ブリキ、トタンと呼ばれる薄板金属で加工されているケースもありました)。
 
●銅
耐久性に優れた素材で、神社仏閣はほとんど銅製。酸化すると緑青色に変色して味が出ます。耐久性は高いものの価格も高額なため、基本的に一般住宅では採用される様式が限られています。
 
●アルミニウム
薄板としてのアルミニウムの場合、150m以上の長さまで製造(現場成型)可能で、継ぎ目が目立たないのがメリット。錆びにくいのも特徴です。高価で一般住宅用の流通が少ないため、特定の住宅供給メーカーの仕様であることがほとんどです。
 
●ステンレス
アルミニウムと同じく錆びにくい素材で、継ぎ目がスムーズで耐久性も高いです。ただ、こちらも高価で流通量が多くはありません。
 
●その他の合成樹脂
樹脂の表面に劣化と紫外線に強いコーティングがしてあるため、塩化ビニールよりも耐久性に優れています。デザイン性でも勝りますが、その分やや高価になります。
 
それぞれ種類や素材ごとに強度や価格などの違いがあるので、これからマイホームを建てようと考えている方は、地域の特徴や外観、予算などご自身に適したものを選びましょう。
 
 

設計、製造にもノウハウが活かされています

 
雨といの種類や素材についてご紹介してきましたが、この章では雨といがどのように作られているかをご紹介します。金属雨といの製造メーカーに、設計・製造をする際のチェックポイントを伺いました。
 
●耐候性、耐風圧性能、耐荷重性能
●塗膜性能
●耐水漏れ性能
 
これらは主に耐年数に影響する項目です。耐候性は、日光や雨など天候がもたらす要因に対する耐久性のことで、雨といの塗膜がどれだけ長持ちするかというのが塗膜性能。風圧や荷重、水漏れも含め、いずれも大切な要素です。
 
●部材寸法が設計交差内であること
●耐輸送性能
●加工、組み立てにおいて問題がないこと(意匠上の問題も含む)
 
耐年数だけでなく、安全に取り付けをおこなうための項目もあります。設計・製造プロの技術、そして研ぎ澄まされたデザインの見せどころです。
 
このような多岐にわたるポイントに基づく厳しい社内基準をすべてクリアした製品を出荷しているとのことです。私たちが住居で安心・安全に過ごせているのも、このようなプロが1つ1つ細かいこだわりを持って設計・製造してくれているおかげなのです。日々研鑽を積むプロのノウハウが、多くの人たちの生活を支えてくれています。
 
 

定期的なチェックなどメンテナンスを忘れずに

 
種類や素材、住んでいる地域などいろんな要素はありますが、雨といの寿命は20~25年程度と考えておきましょう。見た目や機能性に問題がないように見えても、実は劣化が進んでいたというケースもあります。もちろん寿命が来るまでずっと放置しておいてもいいというわけではありません。修理が必要になる状況もあるので、定期的にチェックしておくのがいいでしょう。
雨といが壊れるのにはさまざまな原因があります。なかでも多いのが「詰まり」です。雨といにはビニールや落ち葉、土埃などがゴミとしてたまってしまうことがあります。ゴミが増えてしまうと雨といが詰まってしまい、雨水が適切に排水されません。これを放置しておくと、ヒビが入ったり、割れたり、歪んだりといった破損につながります。そのほかにも、台風や大雪などでいきなり壊れてしまったり、支持金具がずれて傾斜異常を起こしたり、経年劣化以外で壊れることは十分に考えられます。
定期的にチェックして、少しでも異常を感じ取ったら業者に点検してもらうように心がけましょう。具体的には、軒といや縦といの接続部が外れていないか、または変形などの不具合が起こっていないか、金具が外れていないかといった目視で分かる範囲。そこでトラブルを発見したときは、専門業者による補修や清掃、交換などを実施しましょう。また、自分のチェックで問題がなくとも、ベストコンディションを維持するために年に一度は専門の業者による保守・点検・診断もおこなってください。梅雨や台風の前後、もしくは雪解け後などを目安にしておくと忘れないのでおすすめです。自分で直せるケースもありますが、高所での作業になることが多いので、プロに依頼するのが安全です。雨の日という限定的な活躍の機会ではありますが、これを機に、見落としがちの雨といに意識を向けてみてはいかがでしょうか。
 
※今回、記事作成に当たり株式会社タニタハウジングウェア様に内容の推敲や助言等、多大なご協力を頂きました。末尾ではありますが厚く御礼申し上げます。
 
株式会社タニタハウジングウエア公式HP
https://www.tanita-hw.co.jp/

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