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屋根と暮らしのスタイルマガジンRoofstyle

1000年以上長持ちする屋根建材としての「チタン」

屋根材

原子番号22 Ti(Titanium)、通称「チタン」。
みなさんは、チタンという素材にどのようなイメージをもっていますか?
チタンは実用金属の元素のなかで、鉄、アルミニウム、マグネシウムに次いで4番目に多い鉱物資源です。用途の大半は航空機や工業用のプラントとなっていますが、眼鏡のフレームやピアスなど、私たちの身近な物にもたくさん使用されています。近年は屋根建材としても注目されているチタン。今回は、そんなチタンについてご紹介していきます。

 

チタンの発見から普及までの歴史

 
世界で初めてチタンが発見されたのは1790年。そこから約150年後の1946年ごろから航空宇宙、化学、電力などの分野でチタンが実用化され始めました。さらに1970年になると、建材としての運用が始まります。そのきっかけは、塩害環境に悩みを抱える海岸地域において、腐食しない素材として、神社仏閣など恒久的建築物の屋根材として使用されたことです。それから「屋根建材としてのチタン」は徐々に認識を広め、近年では一般住宅にも普及し始めるようになりました。1990年になると日本を中心に海外でも注目度が高まり、さまざまな国で運用が開始。2017年には日本から世界に先駆けて「チタンに美しさ」を追求するチタン素材ブランドが始動。その市場規模は、今後さらに拡大していくと予想されています。
 
 

鉄よりも軽くて強度が高い素材

 
チタンの特長としてまず取り上げられるポイントは、重量と強度です。チタンと鉄を比重(※1)で見比べると、チタン4.51に対し、鉄の比重は7.87。水の比重は1で、この数値より大きいものを水に浮かべると沈みます。つまり、チタンの重さは鉄の約60%で、鉄より軽い素材ということ。そして、チタンの優れているところは軽量な素材であるにもかかわらず、強度が高いという点です。例えばチタンと鉄を比強度(※2)で見比べると、チタンの比強度は鉄の約2倍。比強度が高いほど大きな衝撃を受けても破損しづらいため、ロケットや航空機の部品など、チタンはこれまで鉄と異なる分野で頻繁に使用されていました。その安全性の高さから、医療分野でも重宝されているチタン。ペースメーカーや人工関節など、身体の中に埋め込む医療機器でも使用されています。
 
さらに、チタンは耐食性にも注目されている素材です。通常環境で腐食する可能性は、ほぼゼロ。金属の天敵である海水に対しても、白金(プラチナ)並の耐食性を誇ります。そのため、海岸地域の屋根建材として最適な素材といえるでしょう。
 
また、線膨張係数はステンレスや銅の2分の1、アルミニウムの3分の1で、気温変化による伸縮が少ないのも特長のひとつ。つまり、熱膨張が少ないということで、耐熱性も備えています。
 
環境面で見ても優秀です。金属イオンの溶出が少ないので環境に優しく、半永久的に劣化しないためリサイクル性にも優れています。
 
色については塗装するのではなく、素材そのものの色となるため、変色することはあっても、色が剥げる心配もありません。1000年以上長持ちする素材にも関わらず、紫外線に色が剥げないというのは塗装費用という面からみても、とても優れています。
 
軽くて強度が高く、耐食性や耐熱性、リサイクル性、意匠性まで兼ね備えた素材。それがチタンです。建材にも適した特長を持つチタンは、鉄とともに適材適所で活躍することが増えていきそうですね。
 
※1 ある物質(ここではチタン)の密度と、同体積の水との密度比。ある物質が気体の場合は、空気との密度比
※2 質量に対してどれくらいの強度があるかの指標。高いほど軽くて強度が高い。比強度=引張強さ÷密度(比重)。
 
 

アクセサリーや眼鏡のフレームにも使われている

 
素材として優れた特性を多数保有しているチタンですが、用途例がロケットや航空機、医療機器など、身近にないものばかりでピンとこないという方も多いのではないでしょうか。実は、私たちが普段生活をしている中でも、チタンを目にする機会は割とたくさんあります。
 
チタンは、生体適合性が高いという点も特長のひとつ。簡単に言えば、金属アレルギーの心配が少ないということです。そのため、医療用のインプラントや装具、さらにはピアスやイヤリングなどのアクセサリーにも使用されています。眼鏡のフレームもそうですね。ほかにもフライパンや中華鍋といった調理器具、熱伝導率が低いため、温かい飲み物を入れても外側が熱くなりにくいことから、チタン製の食器も人気があります。特性の万能さから、規模の大小を問わず、さまざまなものに使われているチタン。では次に、建物で採用されている具体的なケースをご紹介します。
 
 

「竜宮城」を模した駅の屋根建材にチタンを採用

 
江の島観光の玄関口として、多くの観光客に利用されている小田急電鉄の片瀬江ノ島駅。1929年に開業して以来、「竜宮城」を模したデザインで知られ、関東の駅100選にも選ばれるなど、地域のランドマークとして親しまれている駅ですが、実は改修工事の際、屋根建材にチタンが使用されています。
 
片瀬江ノ島駅は海岸近くに位置しており、維持管理の厳しい塩害環境にある駅です。そこで採用されたのが、耐食性の高いチタン。海水に強く、腐食しないという特性により、美しい屋根を長期にわたって維持することができます。緑青色のチタンが、国の名勝地を含む著名な伝統建築改修に多くの実績があったことも採用の理由なのだそう。緑青色の屋根材といえば、頭に思い浮かぶのは銅材ですよね。伝統的な銅材に代わりチタンを採用することで、約60%の軽量化と耐震性の向上を実現しました。これも、新たに生まれ変わった片瀬江ノ島駅の特長といえるでしょう。
 
 

建物にチタンを採用するのは合理的?

 
建物にチタンを採用するメリットを挙げるなら、まずは軽くて強度があるという点です。そして海水に強く腐食もしないため、片瀬江ノ島駅のような海岸近くの場所でも半永久的に機能の維持ができるのも重要なポイント。また、チタンはアートやデザインの分野に用いられることがあるほど美しい金属です。意匠性という観点から見ても、建物にチタンを使うことは合理的であると言えます。
 
逆に、デメリットもふたつ存在します。ひとつは加工の難しさ。そして、もうひとつは高度な技術が必要なことにより、ほかの金属材と比較して価格が高くなりがちなことです。このふたつのデメリットが、チタンを建材として採用するハードルになっています。
 
実際に、公共建築や社寺建築などで頻繁に使われることはあっても、戸建てのような個人でチタンを採用するのは珍しい事例です。ただ、建物に使われる材料はもれなく耐用年数が存在します。数十年と使い続けるならメンテナンスや張り替えなどで補修費用がかかり、廃棄する場合は環境負荷も気になりますよね。
 
その点、チタンは半永久的に機能を維持できるので補修費用の削減が可能です。さらに、リサイクル性にも優れているので、鉄と同様に廃棄時の環境負荷にも不安はないと言えます。ガルバリウム鋼板の上位互換と言っていいかもしれません。このような面から考えても、建物に使用する素材の選択肢に今後チタンが入ることが当たり前になっても不思議ではないですね。ただ、他の素材と比べてコスト面が唯一のネックと言えるかもしれません。
 
 

デザイニングチタン「TranTixxii(トランティクシー)」

 
最後に、日本製鉄が提供するデザイニングチタン「TranTixxii®︎(トランティクシー)」についてご紹介します。実は片瀬江ノ島駅のチタンにも、このTranTixxii®︎が使われています。
 
日本製鉄は、チタンの分野において唯一無二の技術力を保持する企業です。建物にチタンを採用する場合、材料が大量に必要になりますが、日本製鉄は他社では難しいと言われる建築用に色彩/色調を整えたチタンの大量生産ができる技術力を保有しています。だからこそ、駅という大規模な施工にもチタンを採用することができました。
TranTixxii®︎は、そんな日本製鉄およびパートナ一会社の技術の融合により誕生したブランドです。
 
チタン固有の優れた特性(重量、強度、耐食性、リサイクル性など)は維持しつつも、優美な表面処理によって光と色を自在にコントロールし、独自の意匠性を両立。無塗装で表現可能な色調バリエーションが100種類以上もあり、紫外線や海水の影響を受けにくく、長期にわたって鮮やかさを保つことができます。そんな「時を超えて持続する美しさ」を実現させた最先端の素材がTranTixxii®︎です。
 
2022年には、世界三大デザイン賞のひとつと称される「レッド・ドット・デザイン賞2022(Reddot Design Award 2022)」を、金属素材として世界で初めて受賞しました。さらには2024年に、同じく世界三大デザイン賞のひとつ「iFデザイン賞2024」も受賞。国内のみならず世界での知名度も高まり、国際的にも高い評価を受けています。
TranTixxii®︎が、チタンという素材の可能性を広げて、人々のより良い未来のために貢献していることは間違いありません。今後チタンがどのように世界で活躍していくのか、ぜひみなさんも注目してみてください。
 
<TranTixxii®︎特設サイト>
https://www.nipponsteel.com/product/trantixxii/
そして、日本製鉄グループでは、チタンをはじめとする「デザイニング・メタル」プロジェクトを推進しております。金属の質感を活かした美しい意匠性と、用途に応じた機能性を兼ね備えた、金属の可能性を示すプロジェクト。TranTixxii®︎のほかにも、さまざまな製品や建築物で使われているデザイニング・メタルが存在するので、そちらもぜひ一度チェックしてみてください。
 
<デザイニング・メタル>
https://www.nipponsteel.com/common/secure/company/publications/quarterly-nipponsteel/pdf/2022_14_all.pdf

 
 

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