歴史と現代に見る自然派の屋根材
日本で初めての屋根
ところで、茅葺き屋根はいつごろからあったのか、ご存知ですか?
それは、なんと縄文時代にさかのぼります。遺跡などの調査から、日本で初めて人の手によって作られた住まいは縄文時代の「竪穴式住居」とされています。竪穴式住居には壁がなく、地面に掘った穴の上に直接茅葺きの屋根が乗せられていました。茅葺き屋根は日本で初めての屋根になります。
茅は日本中どこでも手に入りやすい材料だったため、茅葺き屋根は時代を超えて全国各地で作られ続けました。茅葺き屋根の家は身近な自然の材料で作ることができる日本の風土に合った住まいだったのです。
茅葺き屋根のヒミツ
白川郷の家々はかなりの急勾配ですが、本来はここまでの勾配は必要ありません。養蚕が盛んだったこの土地では、屋根裏に蚕を飼うスペースを最大限に確保する必要があったためでした。
こうした歴史的な背景から、茅葺き屋根は日本に最も古くから伝わる自然素材の屋根材といえます。身近な自然を暮らしに取り入れることが上手な先人の知恵が屋根にも詰まっていたのですね。
こんな自然素材の屋根も
石置き屋根という自然の石を使った屋根があったのです。いまでも北陸や北海道の海岸地域などの一部に現存するこの屋根は、板葺きの上に石を置いたもの。
風の強い沿岸地域で、屋根材が飛ばされないようする知恵だったのでしょう。こちらも、その土地にある自然の材料を使って風土に合わせて作られた屋根なのです。
工業製品である瓦は奈良時代に登場しますが、広く普及し始めるのは江戸時代の中期以降でした。石置き屋根はそれまでの中間的なものであったと考えられます。
現代の自然派の屋根は
一方で、近年、環境意識の高まりから、屋上や屋根の緑化が注目されています。屋上緑化といえば、公共の建物や商業施設などの大きなビルにあるものといったイメージが強いですが、いまでは、一般住宅の屋根や屋上にも植物を植えて緑化できるようになっています。これなら、庭のないお宅でもガーデニングが楽しめますし、屋根の緑が夏の日差しをやわらげ、冬は屋内の熱を逃しにくくしてくれます。冷暖房の効率も良くなり、ひいてはヒートアイランド現象の緩和にもつながります。
屋上や屋根の緑化の動きは、屋根の防水技術や屋根材、園芸材料などの開発の進歩があってのこと。現代では、最新の技術によって住まいに自然を取り入れることができるのです。
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